家づくりブログ
blog医師も推奨する健康性能:対談レポート
先生は、上田市で内科医院を営む医師。熊本県の出身で、信州へ来たのは佐久総合病院という地域医療の先端病院に勤務したことがきっかけです。今どき珍しい、往診を惜しまないお医者さん。だから、地域の人たちの暮らしに関することはけっこう詳しく知っています。不登校の相談もきます。なんとなく食欲がない、という患者さんもきます。いろいろな症状を聞いて、治療に最適な専門医を紹介する窓口業務的な役割も担っています。そんな井先生が、7年前に偶然出会ったのがWB工法の家でした。これが先生の住宅観を一変しました。家がこんなにも人に影響を与えるということ、毎日を過ごすこの小さな環境が、弱い命を逃げようのない最悪の状況に追い込んでいることを体感して、もう、黙っていられなくなったのです。棟梁・寺島との語り合いが始まりました……。
あッ、空気がやわらかい…
井
お恥ずかしい話ですが、7年前に家を新築したとき、まず住宅展示場に行ったんです。一般の人が、家を建てようというときに、まず情報を得るのは展示場。それでいくつかを見てまわって、そこから選ぶしかない。私もまったく無知でした。
寺島
WBの家を知っていただけたのは偶然でしたね。
井
たまたま地元の工務店さんが、こういう工法の見学会があるので、一度行ってみませんか、と勧めてくれ、それで、寺島会長の建てたWBの家を見せてもらいに行ったんです。
寺島
私の自宅でしたね。まだ、ワンダーベースもなく、そんなふうに知っていただくしか方法がなかったのですね。
井
最初は半信半疑でした。全然知識がないんですから……。WB工法なんて聞いたこともないし、何が違うかもわからないわけです。それがね、扉を開けて中に入ったとたんに「あッ、空気がちがう」と感じたんですよ。なんていうか、やわらかい感じがするんですね。それで壁に近づいたら、スーッと風の流れを感じたんです。冬だったんですが、暖房で人工的に暖めているのでなく、空気が心地いいんです。「これは、なんだろう」とびっくりしました。
寺島
一口に言ったら「快適さ」ということなんでしょうが、その心地よさを伝えるのがとても難しいんです。目に見えないものですから、なんて言ったらいいのかわからない。
井
確かに空気のやわらかさなんて測れませんものねえ(笑)。でも、私は実際にWB工法の家に入って、すぐ感じました。
寺島
私の家内も、WB工法の家に暮らし始めて2年ほど経ったころ、「お父さん、この家いいね」と言うのです。話を聞いたら、よその家に行っても、頭はのぼせるぐらい暑いのに足元は寒く、毛糸の靴下を履かないといられない。コートも脱ぎたくないぐらいだけど、自分の家は暖かい、と。家内に心地よさを実感してもらうのに2年間もかかりました。
井
実は私も開院した時、もうコンクリートの病院はまっぴらだと思って、ふんだんに木を使った医院を建てたんですよ。それで「癒しの空間」だと満足していたんですが、WBで建てた自宅の方がずっと快適なんです。職場は冬は寒く、夏は汗だくでどうしても空調しないとならない。それが、家に帰ると玄関を開けて入ったとたん、やわらかい空気で、出勤する時に元気になって再生していけるんです。
エアコンの中で退化する皮膚
寺島
「再生される感じ」というのはどんなものなんですか?
井
私、以前はけっこう胃腸薬とか風邪薬とか、自分の体調を管理するための薬を飲んでいたんですが、ある時、薬局の人から「先生、最近は薬を取りにこないけど薬局を変えましたか?」って言われたんです。気がついたら薬を飲まなくなってたんですね。
寺島
ほう。ご自身も最初は気がつかなかったんですね。
井
ええ。それで考えてみたら、転居を契機に変わったんだなあ、と。ただ、家に帰って普通に過ごして寝てるだけなんですけどね。ときどき出張で東京のホテルなどに泊まると、どんなに一流のホテルでも具合が悪い。どこよりも、自宅が快適なんです。1年半ぐらい住んで実感しました。
寺島
WB工法の快適さっていうのは、「暑すぎず、寒すぎず」なんです。1年中25℃に人工的に調節された高気密高断熱の家が本当に人間にとって快適なのか、というと必ずしもそうじゃない。四季の変化の激しい日本の気候に合った快適な住まいがあるはずなんです。
井
私のところに来ている患者さんは、最近アトピーとか慢性蕁麻疹など、原因のよくわからない病気の人が子どもを中心に増えています。あんまり温度差のないシェルターのような空間に住みますと、まず皮膚が退化します。暑いときは汗を出して熱を逃がしたり、皮膚面から熱を逃がして体温調節をするといった皮膚の機能が要らなくなる。寒さに対しての免疫もなくなり、ちょっとした寒さで風邪をひいたり、ちょっと暑いと熱中症になってしまうような、環境の変化についていけない異常な体質になってしまうんですね。
寺島
昔の隙間だらけの家で育った人間の方が、環境の変化には強いですからね。
井
今の子どもが心配ですよ。WBの良さは、抜群に快適な温度差なんです。暑すぎず寒すぎず、うまく自然環境と折り合って暮らしていけるんです。
寺島
超高気密高断熱の家を建てるぐらいなら、昔からの家の方が、まだ健康のためにはいいぐらいですよ。
井
私は、子どもたちとか、高齢者が過ごす建物は全部WBにしたらいいと思います。コンクリートの病院や老人施設など、息のできないような部屋にいて、そこで「これで終わりだよ」って言われたらたまったもんじゃない(笑)。弱者に対して、せめて暮らすのは優しい空間にしてあげたいな、と思います。
“健康・家族・時間” の人間中心の家づくり
寺島
家づくりというのは命に直結している仕事だということに、ほとんどの人が気づいていないですね。
井
大工さんも工務店さんも「自分たちの仕事は決してお金を得るためだけの仕事でなく、一生を費やして取り組むだけの価値がある、それが家族の幸福につながり、次の世代の財産にもなるのだから」と考えれば、やる気が出てくると思うんですけどね。私は、家づくりに関わってがんばっている人たちを励ましたいですよね。
寺島
今、ハウスメーカーが盛んにローコストの家というのを売っていて、若い世代はお金がないから、ローコスト住宅に飛びついています。みんな子どもを育てている若い世代。それが問題です。いちばん危険な住宅に、未来を生きる孫の世代が住まざるをえない、というところがつらいですね。それをどうやって訴えていったらいいのか……。
井
そろそろ、人間中心主義になるべきですね。お金中心は、もうやめにしないと。私が考えている大事なものは「健康・家族・時間」です。この3つはお金を出しても買えないんですよ。WBの家を建てる前まで、私は一生借家でいいと思っていました。どこにでも住めるし、ローンもない。借家で十分だ、と。でもこの家を建ててみて、これはお金に代えがたいものだと思ったんです。ローンなんでどうでもいいっていうぐらい価値がある。私や家族が健康で快適に暮らせて、毎年、放っておいても蘭の花が咲くような環境……。これは命に直結した、お金に代えがたいものだと思うんですね。
寺島
うれしいですね。先生のような医療のプロにそういっていただけると、本当にこれまでやってきた甲斐がある。でも、家づくりの世界には様々なしがらみがあります。いちばんしがらみに左右されないのがお施主さんなんですが、お施主さんになる一般の人たちのところには、なかなか情報が届かないんです。高気密高断熱で世の中が動きだすと、工務店もそこに乗っていかないとつぶれてしまう……。そういうギリギリのところからWB工法は生まれてきました。
井
国を訴えたいぐらいですね。
寺島
日本の家づくりがおかしくなったのは、ここ40年ぐらいのことなんです。パネルで囲ったプレハブが登場し、合板で囲ったツーバーフォーが輸入され、高気密高断熱が国を挙げて推奨されてきました。その結果、シックハウス症候群が問題化されると、24時間換気を義務づけることによって、一件落着させてしまいました。家づくりはそんなご都合主義では解決するはずがありません。せっかくお金をかけた設備も、まったく使用していない家庭がたくさんあります。
井
実際、寒い昔の家は脳出血が多かった。塩分の取りすぎもありましたが、冬にトイレなどの寒いところで倒れる人が多かったんです。これが家屋の変化によって激減したことは間違いありません。そういう面では、冬暖かい家は意味があったと思います。ところが、振り子が振れすぎて別の病気が出てきた。今こそ、これまでの家づくりを総括して、未来型の住宅を考える時ではないでしょうか。原点を「人間」においた、本当に人間が生きていくのにふさわしい家とは何かを考えるべきでしょう。WB工法は、その答えなんです。